2007年分
本音と建前 2007年12月

 例年ですと10日頃が仕事納めです。でも今年は20日や26日など飛び飛びで仕事が入っています。とにかく忙しい1年でした。過去最高の忙しさを記録したようです。『働かないほうが儲かる』、というと研修参加者の皆さんは怪訝(けげん)な顔をしますが、小さな会社だからこそ経営してみるとその意味が分かります。

 『嘘も方便』という諺があります。研修を担当させていただくとき「先生、厳しくお願いします」とよく言われます。でもそれは厳しさが分かっていない人の、真に方便でもあることがあります。(全てがそうである、との意味ではありませんので・・・)気をつけないと痛い思いをすることがあります。

 最近、私は本音で物を言うように路線を転換しました。でも、長年この仕事をしていると『本音』と『建前』を使い分けられない講師は苦労することも承知しているのです。所詮、悪口を言われて気分の良い人などいる筈がありません。下手に本音を述べたら命取りになることなど誰よりも知っているつもりです。A市、B市、C市の研修で『レベルが低過ぎる』と言ったら翌年から仕事が来なくなりました。でも、世の中には必ず賢人がいるものです。初取引の自治体Nに対して、研修後にかなり厳しいコメントを送りました。対象が管理職ですから妥協は許されません。高橋はキザなようですが『研修はいつも真剣勝負』だと思っています。後日、研修担当のKさんから「当市の研修始まって以来の厳しいコメント」とのメールをいただきました。このKさんが偉いのです。尊敬する先輩に私のコメントを見てもらったそうです。そして、「この講師はまともだよ。悔しいけどレベルが低いと言われても反論できないよ!」と言われたそうです。早速、彼から20年度に同メンバーにフォローアップ研修をお願いしたい旨の連絡がありました。

 来年度も憎まれ口を叩きながら研修を担当させていただきます。それが私の宿命と思っております。来年もよろしくお願いいたします。よい年末年始をお過ごしください。
 

情報を提供する 2007年11月

 さまざまな研修を担当させていただきますが、階層や年齢を問わず、かなり多くの頻度で感じることがあります。失礼な言い方ですが、「自治体職員の皆さんは新聞やニュースを見聞きする暇もないのか」と。あまりの情報不足に驚くことがあります。つい先日の新聞にも「神奈川県は871億円の黒字、鹿児島県は246億円の赤字。以下略。」なる記事が『三位一体改革 35道府県「赤字」』の大見出しで載っていました。

 研修に伺って「こんな記事が載っていました。よろしければ、どうぞ」とコピーをいただいて帰ることがあります。「先生、○○の本、お読みになりましたか?とてもいいですよ!」などと教えていただくことがあります。そんなとき、私はとても嬉しくなります。素晴らしいお土産をいただいたことに感謝します。研修担当者の皆さん、明日からの研修に付加価値を付けたらいかがでしょう。研修参加者の皆さんに情報提供、というプレゼントをするのです。新聞や書籍のコピーを配布する、良い書籍があったら紹介するなど、これを繰り返して(1回の研修に何かを一つ)ください。そうすることは、あなた自身の大きな財産にもなるはずです。
 

研修の効果うんぬんの前に 2007年10月

 早いところでは、そろそろ20年度の研修計画・予算検討に入られる頃と思われます。どのような研修を計画実施しようか、と頭の痛い時期を迎えることとなるでしょう。首長や研修主管部門のトップが代わると人材育成への取り組み姿勢が大きく変わります。変な話です。人材育成は、道路や建物をつくる事業とは違うはずなのに!!

 人材育成の重要性が組織に浸透しないのは、その効果がうまく測定できないところにあるようです。しかし、適切な効果測定が全くないわけではありません。時間をかければ方策はいくらでもあります。ただその前に考えなければならないことがあるのではないでしょうか。自治体には仕事の標準化が機能していないのです。例えば、ある起案書を作成するのにAさんは1時間で完了したとします。でもBさんは2時間かかりました。似たような例で、同じ書類をパソコンで作成した場合、Aさんは2時間かかりますがBさんは1時間で済むようなケースもあります。民間なら動作分析・作業分析などをとおして格差の原因を追究して標準化に努めます。そのようなことを考慮しないで研修を導入するから「効果うんぬん」と言われるのです。『目標による管理』や『キャリアデザイン』などの研修はその典型です。ニーズ把握が研修計画の原点にあることを忘れないでください。
 

班編成の目安 2007年9月

 弊社の研修は例外を除き、講演の場合でも班を編成します。テーブル3本をコの字型に並べて1班6名を基準としてレイアウトします。このときの班編成によって研修への影響がかなり生じます。参加者をバランスよく配置しなければなりません。その目安は、@男女比 A所属(同じ所属の人が同じ班にかたまらないように) B年齢(各班とも平均年齢が同じくらいになるように)などを考えなければなりません。個人情報保護の関係から年齢は把握できない(中には男女の区別も分からないという自治体があります)ところもあるようですが、おかしな話だと私は思います。

 以上3点は当然ですが、これからのことは異論がある方がいらっしゃることを承知で配信させていただきます。@研修担当の判断でその班をリードできそうな人 A似たような研修を過去に受講した経験者 B意欲がなく研修に嫌々参加している人 などを、やはり、バランスよく配置することが大切です。そこまで把握することは大変なことだと思います。でも、研修を主管する「総務部」「人事部(人事課)」では、その目安となる情報は持っているはずです。研修担当者が観察しなければならないのは、上記Bのような参加者の態度変容であることを忘れないでください。
 

事前と事後の課題 2007年8月

 研修をお引き受けした場合、講演以外は可能な限り事前課題(宿題)をお願いすることにしています。負担が少ないように30分〜1時間程度で処理できる内容のものです。参加者のほとんどがその課題に取り組んで研修に臨みます。やってこない参加者も当然います。学校ではありませんから、そのような人は放っておきます。ただおもしろいことに、そのような人はやはり研修に対する参加意欲も乏しいのが現実です。一事が万事とはよく言ったものです。

 T市役所の研修をお引き受けして3年になります。こちらでは、研修終了後に事後の課題があります。講師が作成した試験問題と出題テーマによる小論文(約1500〜2500字程度)を期限まで提出しなければなりません。参加者の皆さんも大変でしょうが、それ以上に大変なのは講師です。採点や添削にかかる時間もばかになりません。当然、研修担当者の皆さんの負担も増えます。それでも、このようなやり方はとても大切なことだと思っています。今後の課題としてお互いに考えてみましょう。
 

復命書の工夫 2007年7月

 民間では馴染みのない言葉ですが、自治体では研修終了後の反省や感想の報告書として位置づけられています。(アンケートと兼務したものもあるようです)今回はこの復命書の工夫に関する提案です。

 研修効果を測定する場合、そのベースになるのは研修目標の達成状況です。例えば、接遇やビジネスマナー研修でしたら、態度や行動の形成・変容状況などを把握しなければなりません。通常、復命書は研修終了後のみに提出するのが一般的ではないでしょうか。この復命書を2回提出させること、それが私からの提案です。本人の感想欄には「今後の住民応対に生かしたい」「これまでの応対を反省した」などの言葉が並びます。また、所属長のコメント欄には「今後に期待します」「よく頑張った様子が窺えます」などと記されています。参加した職員が多かった場合、所属長のコメントはどの参加者にも皆同じ、のようなこともあります。

 1回目は参加者も所属長も負担の少ない記述様式にしてはいかがでしょう。所属長は検印だけでもよいと私は思っています。逆に2回目ではチェック項目や記述項目を充実させます。特に、本人には態度や行動の形成・変容状況の振り返りをしっかりとさせます。さらに大事なのは、所属長を(研修に)まきこんだ仕掛け作りをすることです。部下の態度や行動の形成・変容状況の観察を義務化させきちんと記述させるようにします。そうすることで上司自らに研修への関心を高めさせるのです。タイミングは3ヶ月後がよいでしょう。研修担当者は組織のトップや長を抱き込むことを戦略的に考えることも大切です。
 

参加者を観察する 2007年6月

 長年この職業を続けていると妙に嗅覚が研ぎすまされてきます。講義を開始して1時間程度で場の空気が読めるのです。研修にはアイスブレィクが欠かせません。ですから、必要以上にそのために神経を使います。短時間で済む場合、そうでない場合など状況はさまざまです。時には、「早く本題に入ってくれないかな・・・」、そんな研修担当者の無言のメッセージも聴こえてきます。でも、最近は承知で我が流儀を通させていただいております。動機づけがしっかりしていなければ、どんな研修を主催しても効果が上がらないことが何よりも実感できるからです。

 本来、研修担当者の皆さんが、オリエンテーションの中でそれらのことも行わなければならないのです。2003年度配信「オリエンテーションの真の意味」をあらためてご覧ください。研修担当の皆さんも、オリエンテーションの機会をとらえて場の空気を読む訓練をしてください。

 それともう一つ、最近、気になることがあります。どちらのお客様でもその傾向は変わりません。『気になる参加者』が必ず居るのです。やる気のない人、心が屈折している人、無反応な人、心の病にかかっているのでは?と思える人など千差万別ですがやたらと気になるのです。研修担当の皆さんも、講師になったつもりで参加者を観察して見てください。よい研修を実現するためにも、皆さんと講師はパートナーでありたいと思うのです。
 

自主勉強会のすすめ 2007年5月

 研修担当の皆さんは、市町村アカデミーや市町村研修所が主催する研修会(研修担当者研修など)や研修計画立案の打ち合わせ会などに参加する機会があると思います。そのような機会は、自分自身のためにも有効に活用してほしいと思います。でも、そのような場は、やはりお膳立てされたものに変わりはありません。

 昨年、某市役所の保育士の皆さんの研修会を担当させていただきました。実は、それは研修会ではなく勉強会だったのです。聞けば、会費を集めて(自腹で)年に数回、自主的な勉強会を開いているのだそうです。そのことをお聞きして、過分な講演料をいただいたことを後悔しました。

 自治体研修担当者には近隣ごとに、ネットワーク(近隣市町村担当者会議のようなもの)があると思います。それらを利用して自主研究会や勉強会を開かれたらいかがでしょうか!?もちろん、自己負担が条件です。講師が必要であれば、ビジネスは抜きにして応援してくれる講師は居ると思うのです。(但し、意気に感じれば、の話でしょうが)研修担当者の皆さんには、人一倍、勉強してほしいと思う今日この頃です。
 
 『知っ得豆知識』を増設いたしました。毎週水曜日配信です。自治体情報をお届けいたします。ご期待ください。
 

己を生かす 2007年4月

 19年度を迎えました。例年のことですが、行く年来る年を痛切に感じます。長年お世話になりました研修担当の皆さんがまた異動しました。同士の皆さんとの別れはやはり淋しいものです。特に、互いに同士として研修を真面目に考えてきた方はことさらです。

 私もこの世界に身を置いて、まもなく20年になります。かつては“世界の時計SEIKO”と栄華を極めた会社に勤めていました。転職した日がつい昨日のような気がします。この業界は、研修担当者を経て転職するのが一般的です。でも私は全く違いました。製造現場や営業、バイヤーを経ての転職ですから、真にズブの素人からの転進です。最初の苦労は並み大抵ではありませんでした。でも今思えば、そのことが幸運だったと思えるのです。素人だけに新しい発想ができます。素人だけに無条件で多くのことを吸収できました。世の中には何一つムダが無いことにも気が付きました。“過去の人生が皆、財産”。今はそんな心境なのです。

 去り行く方、あらたに研修担当になる方に申しあげます。与えられたチャンスは己を生かす最大の近道なのです。新しい研修担当の皆さん、この機会を大切にしてください。(継続の方は当然ですが・・・)プライドを持って研修の仕事を極めましょう。手前味噌ですが、うぬぼれているようですが、私は今年も『日本で一番忙しい講師』と自負して現場主義を貫き通したいと思っております。(念のため、やせ我慢では決してありません。本当に忙しいのです。)
 

喜怒哀楽 2007年3月

 18年度も残すところ1ヶ月となりました。研修担当の皆さんは1年間の総括や新人の受け入れ研修の準備などで慌しい毎日かと思います。

 とにかく忙しい1年でした。私個人の仕事量は過去最高を記録しました。仕事が多いということはそれだけ多くの人との出会いも多くなります。出会いが多くなるということは喜怒哀楽もまた多くなるということです。世の中、なかなかうまくいかないものです。最近のモットーは『頑固に真面目に』。でも、主義主張を通せば通すほど厚い壁に阻まれます。いい加減が嫌いな私は、それなりに(かなり)真面目に取り組んできたつもりですが、思いの声はなかなか届かないようです。結局、口は災いのもとか、本音を言えば嫌われる?怒りと哀(悲)しみに打ちひしがれました。財政難を口実に研修予算もかなり削られているようです。研修予算など他の予算から比べれば微々たるものなのに!ムリ・ムダ・ムラを無くせば研修予算などもっと増やせそうな気がするのですが・・・揚句の果ては『研修のアウトソーシング』。それによる費用削減など微々たるもの。失うことのほうが私はもっと大きいと思うのですが・・・(これ以上述べるとまた嫌われそうです)
 こんな私でも世の中の役に立っているようです。「勇気と元気をいただきました!」「自分の小ささを感じました。もっと謙虚に生きたいと思います。」、そんなことを言っていただくと怒りや哀(悲)しみは半減します。私も勇気と元気がでてきます。だからこの仕事はなかなか辞められません。
 『苦あれば楽あり』。2泊3日の接遇指導者(講師)養成研修、厳しさを乗り越えた25名の皆さんとともに「やったー!!」という満足感を得て、研修の楽しさを実感しました。平均年齢が男性71歳、女性69歳。9時から5時まで休む暇もありません。まして2日間コースです。担当する私の精神的苦労は想像していただけましょう。正直、疲れました。でももっと疲れたのは地域リーダー養成研修に参加してくださった皆さんです。熱意・意欲に脱帽です。「やる気のない研修参加者は爪の垢をもらって煎じて飲むといい」、心底そう思います。充実した2日間でした。

 結論です。研修の良し悪しは講師・研修担当者・参加者次第。研修担当者であるあなたの喜怒哀楽は何ですか!
 

研修目標の明確化 2007年2月

 組織における研修の目標は、組織の課題と組織において研修が担うべき役割やニーズによって設定されます。研修担当者は、その目標を漠然と捉えるのではなく、明確に捉えてそれに沿った企画を立てなければなりません。概ね、1.組織の経営(運営)理念・方針・課題などの浸透 2.組織における課題解決への取り組み方への理解 3.職務上必要とされる知識や技能の習得向上 4.組織人(職業人)としての態度形成や変容 5.組織内コミュニケーションの円滑化 6.住民応対コミュニケーションの円滑化 7.組織の生産性、事務効率の向上 8.自己啓発の促進と支援 9.活力ある組織形成 10.組織内の諸業務の改善 などに目標を明確化できます。

 つまり、編成された研修カリキュラムがどの目標とリンクしているかを見極めることで、カリキュラムの精度の良し悪しや適合性が評価できるのです。ここでは研修の効果測定については触れませんが、研修の評価は目標と表裏の関係にあるのです。

 研修テキストを作成するとき、私は必ず1ページ目に〜はじめに〜と記載して研修の目標やねらいを箇条書きで明文化します。研修担当者の皆さんも、研修の募集要領(参加案内)を配付するときは必ず『目標=目的』を抽象的な表現にしないで箇条書きで明文化する習慣をつけてください。そうすることで、研修スタート時のオリエンテーションもしっかりしてきます。
 

甘やかしからの脱却 2007年1月

 明けましておめでとうございます。旧年中は格別のお引き立てを賜りありがとうございました。本年もよろしくお願いいたします。

 自治体を取り巻く環境は厳しい時代から苦しい時代に突入した感が否めません。職員にはいままで以上の意識改革が求められるでしょう。そして、私たち研修講師にも内容や指導面での改革が求められています。昨年は特に、目をつぶってはいけない場面では、信念を持って喧嘩をしました。たった半日、たった1日、長くても2日か3日のつきあい、研修講師はそういう中に身を置いているだけなのです。あえて憎まれ口を叩く必要もないのです。(もう憎まれ口を叩くのは止めよう、何度そう思ったかしれない1年でした。)

 失礼ですが、職場の先輩や上司、そして研修担当の皆さんも参加者(受講者)を甘やかせてはいないでしょうか。すべてお膳立てされた中で開催される研修が多過ぎます。参加者の皆さんもお客だと思っている人が大勢います。講師は勝手な指示命令は出せません。厳しい講師をお好みの研修担当者はいませんか?しかし、それは本末転倒です。講師に厳しさを要求する前に、自分自身が参加者に厳しい姿勢で臨むことが先決です。手ぶらで研修にくるような人がいたら、受付の段階でノートを取りに行かせるくらいのことはしてほしいものです。自分でできない場合は上司を活用することです。若い研修担当の皆さんはそれでいいのです。大事なことは研修時のおかしさな状態に敏感になることです。

 今年は研修担当の皆さんと厳しさを共有して研修に取り組みたい、と心底思っております。(その前に楽しい研修づくりを忘れないようにします。それが本来の高橋らしさだったのですから・・・)


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