『夜8時、寒風の中で露天の店じまいをしている中年男性が今日もいた。余程のことがない限り店は休まない。年中無休といっても過言ではない。私たちが結婚した30数年前は、近くに大手スーパーなど皆無だった。もちろん、コンビニなどもない。ほとんどが小さな商店だった。そんな中でスーパーKは、当時としては、食料品を専門に扱う大きな店として大繁盛していた。市内に2店舗を構えていた。しかし、大手スーパーIの出店で閉店に追い込まれた。今でもシャッターがおりたまま建物は残っている。もう1店舗もまったく同じ理由、大手スーパーTの出店で閉店。こちらの店は取り壊され、今は1階を駐車場にした2階建ての回転寿司店になっている。土地を転売したのか貸しているのかは分からない。もちろん、倒産による負債の有無も分からない。分かるのは、その回転寿司店の駐車場の1角を借りて、冒頭の男性が野菜や果物を広げて売っていることだけだ。そして、その男性が紛れもなくスーパーKの経営者だった人である、ということである。』
この記事は2005年2月「栄光との訣別」と題して配信した記事の抜粋である。当時、かなり反響があったことを記憶している。2階にあった回転寿司は翌年には閉店となり店は取り壊された。駐車場は雨が凌げる程度の天井だけ付いて今も残っている。その駐車場で、あの人は今も朝から夜遅くまで店を開いている。年中無休は間違いない。最近、月に1〜2回立ち寄らせていただく。「精が出ますね!」と私。「じっとしていられない性分なだけですよ・・・」と屈託が無い。夏の暑さもさることながら、これからの寒さは体に堪えることと思う。でも、これまで一度も辛そうな様子を見たことがない。「いつも笑顔」、それは今でも変わっていない。
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